BLOG

【こだわり語り】ANANO NUNO「無限に着回しができる、穴だらけの布」

「あいまいゆう -I MY YOU- 」デザイナーの栗田哲希です。

気づけば、2021年3月末にブランドを公開してから、ほとんど丸一年経ってしまいました。現在は別の仕事をしながら、製作をしています。

しかし、いつか、この「あいまいゆう」を通じて、多くの人が小さい救いを得られるように、少しずつ服を作って、ブランドを大きくしています。今はその道程といったところです。どうか、見守っていただけると幸いです。

前置きはこのくらいにして…

さて、この度は、丁度ほぼ1年前に発表した
「ANANO NUNO -穴の布-」が発売できそうな算段となりましたので、ここに報告致します。

■ANANO NUNO ってどんな服?

この衣服を一言で表すと、
「無限に着回しができる、穴だらけの布」

本体は2m×2mの大きな布です。
布といっても、穴を開けただけの1枚のペラペラした布切れではありません。丈夫な再生ポリエステル生地を使用し、リバーシブルでしっかりと縫い合わせるなど、随所に工夫を凝らしたれっきとした製品です。

無数に空いた穴に、頭や腕などを通し、付属のベルトでシルエットを整えることで、好きな好きな形を無限に創ることができます。

(動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=R22cmk14_5Q

工夫次第で、無限に形を変えることができるため、文字通りの「フリーサイズ」を実現できているかもしれません。誰かが決めた「S/M/L」ではなく、「あなた」の身体にあわせて、あなたの手でサイズとシルエットを調整することができます。

例えば、上の画像は、ワンピース風に貫頭衣と呼ばれる衣服と同様の方法で着用した女性の着こなし。下の画像はジャケットのように羽織っただけの男性の着こなしです。どちらも同じ製品からできています。

この画像ではANANO NUNOだけでコーディネートしていますが、お手持ちの衣服と組み合わせることで、この衣服の可能性はさらに広がります。

■"穴"は4種類。配置にもこだわっています。

穴の大きさと配置にもこだわりがあります。
ただ適当に配置し、穴の大きさを決めたわけではありません。

穴の大きさは全部で4つです。

とても小さい穴:5cm
この穴には、「指」が入ります。

小さい穴:11cm
この穴には、「指・手」が入ります。

中くらいの穴:20cm
この穴には、「指・手・腕」が入ります。

大きい穴:32cm
この穴には、「指・手・腕・首」が入ります。

このように、少しずつ入る部位が増えるように、穴の大きさに段階を設けています。その穴を下記のような矩形の構成の隙間に仕込ませます。そうしてできたのが「ANANO NUNO」です。

つまり、下記がANANO NUNO を広げたときの全貌になります。

ところどころにある色付きの線が「穴」のある場所です。

32cmの穴:赤色
20cmの穴:青色
11cmの穴:緑色
5cmの穴:灰色

このように色付けしてあります。

穴の配置はランダムではなく、計画的に決めています。

32cmの穴は主に頭を通す「襟」の役割を果たすことが多いので、製品の中央に配置しており、それ以外の穴は「袖」となるので、外周に多く配置しています。

このように配置すれば、「手を伸ばした先に自然と袖がある」といった現象が起きるのです。この工夫が、不思議だけれど、気持ちの良い着心地へと繋がります。

例えば、下の画像は、11cmの穴に手を通しています。その結果として、その穴は「袖口」の役割を果たすことになるわけです。

■使用している生地と、廃棄される生地「生地ロス」の話

この衣服で使用している生地のお話をするまえに、少しファッションと環境について話します。

昨今、生産されたが一度も着られず捨てられる衣服、生産過程で発生した布切れなど…ファション業界が与える環境負荷はもはや無視できる段階を超えました。

環境省は「SUSTAINABLE FASHION -これからのファッションを持続可能に-」と題したページを公開しています。
(環境省 SUSTAINABLE FASHION: https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/index.html

ここからもわかるように、私たちの生活は、すでに変革するときまで来ています。そこで「あいまいゆう」では、パッと考えられるリサイクル・リユースだけでなく、新しい衣服との関わり方を模索しています。

そのような理由から、この衣服では、帝人フロンティア株式会社が提供する環境負荷の少ない生地「ECOPET®」を使用しています。
(帝人 ECOPET®: https://ecopet.info/

詳しくは上記URLを見ていただいた方が良いと思われますが、いわゆる「再生ポリエステル」を使用して作られた生地です。年間5,000億本のペットボトルが生産されるも、全てが再利用されるわけではありません。「ECOPET®」は廃棄されたペットボトルや衣料品や繊維くずをリサイクルして、ポリエステル繊維を作り出します。

「ECOPET®」を用いることで、環境負荷にも配慮したものづくりを心がけています。

また、「穴」を使用した様々な着こなしができる衣服なら、たくさん着まわせるから飽きづらい、つまり、寿命が長いんです。四角い布だから、如何様でも使えます。まるで着なくなった着物を雑巾として再利用した江戸時代のように。

さて先程、衣服は生産される過程で生地の廃棄が生じると申し上げました。このANANO NUNOでは、その廃棄を極限まで抑えています。

上の画像は、ANANO NUNOで使用されるパーツです。…多いですね。

本製品は、このパーツを使用する生地の中に下記画像のように無駄なく配置しています。

ただし、工場の都合によっては、このように配置できないのですが、それでも廃棄量を9割ほどに抑えられています。

■ANANO NUNOで、新しい衣服感覚を。

正直に申し上げると、この衣服は、着やすい服ではありません。

着る時に考える必要があります。頭をどこに通すか、腕はどうするか、ここに頭を通すと背中に大きな穴が空くけれどそれで良いのか、丈はどうするのか…などなど…

しかし、あえて私は、それら「面倒臭さ」をポジティブに捉えました。

着るために考えるそれら工程は、衣服との対話であると同時に、自分の身体や性との対話でもあります。スカートのようになった丈を、男性の皆様はどのように処理しますか?ところどころに空く「穴」を、女性の皆様はどのように感じますか?そもそも、男性女性はどこで区別されるのでしょう?

自画自賛ですが…ANANO NUNOはとても面白い衣服です。

着るたびに、新しい発見があります。

「マントのように着ると前衛的」「オーバーサイズのスウェットの下に着るとアクセントになる」といったアイテムとしての発見だけではありません。

ひいては、人にとって衣服はどうあるべきか、ということまで考えさせてくれます。(拡大解釈が過ぎるかもしれませんが)

この衣服をきっかけに、誰かの世界を1mmだけでも広げられたら素敵だと考えております。

あいまいゆうデザイナー 栗田哲希